不登校支援における集合的無意識の活用と「元不登校による場」の価値

不登校支援における集合的無意識の活用と「元不登校による場」の価値

「不登校の子どもが自分らしく生きるには?」

この問いに対する答えとして、ユング心理学の「集合的無意識(Collective Unconscious)」の概念を活用しつつ、「個が融合し合う場」という視点を加えることが重要です。

集合的無意識とは、個人を超えてすべての人間が共通して持つ深層心理の領域であり、

社会全体の価値観や文化が個々の意識に影響を与えるものです。

そのため、不登校の子どもや親が「自分だけが特別なのではないか」

「周りと違うことが問題なのではないか」と思い込みやすい環境が生まれます。

そこで、元不登校の高校生や大学生、さらには元不登校の親と交流する「場」があることで、

「社会に適応しなければならない」という集合的無意識に囚われず、

子どもと親が安心して自分らしい生き方を見つけられる環境を作ることができます。


*ユングの集合的無意識はオカルト的な印象を与えがちですが、

世間の価値観も含みます。

(例:中学生は制服を着て部活と勉強に励むべきだ)

ここでは世間の価値観が多くの人に無意識化された状態を主に集合的無意識と呼んでいます。

ただし、これらはユングが言うような神話の世界の集合的意識にもつながっています。

(例:学校に通うべきだ→どこかに所属すべきだという人類共通の価値観)

1. なぜ「先輩との場」が重要なのか?

不登校の子どもやその親が直面する最大の課題は、孤独感と社会との分断です。

社会の集合的無意識には、
🔹 「学校に行かないのは問題である」という固定観念
🔹 「不登校経験者は普通の人生を送れない」という誤解
🔹 「特別な才能がないと生きていけない」というプレッシャー

などの価値観が深く刻み込まれています。

こうした価値観が影響し、不登校の子どもや親は「このままではいけない」という焦りを感じつつも、

どうすればいいのか分からないまま行動を制限してしまうことがよくあります。

しかし、元不登校の大学生や高校生、または元不登校の親と交流することで、次のような気づきを得ることができます。

✅「不登校でも、その後自分らしい道を歩める」という安心感
✅「学校に戻る・戻らないのどちらも選択肢としてあり得る」という柔軟な視点
「同じ経験をした人がいる」という共感と仲間意識

このような「場」があることで、親も子どもも自分の進む道を冷静に考えられるようになります。


2. 学校復帰やフリースクール併用という選択肢

(1) 学校に戻るケース

集合的無意識にある「学校に行くのが普通」という価値観をただ押し付けるのではなく、

子どもが安心して戻れる環境を整えることが重要です。

学校に戻るケースの例
段階的復帰 → 週に1回から始め、徐々に登校日を増やす
サポート体制の整備 → 学校との連携、スクールカウンセラーの活用
環境の見直し → クラス変更や通学時間の調整

🔹 ケース1: 週1回の登校からスタート
もともと「学校に戻りたいけど不安」という子が、フリースクールを活用しながら少しずつ登校。
最初は保健室登校→放課後に先生と個別学習→週1回登校と徐々にペースを上げ、最終的には全日制に復帰。

🔹 ケース2: 学校のルールを見直し、通学の負担を軽減
朝が苦手な子が、午後から登校できるように学校と交渉し、フレキシブルな登校を実現。
通学がストレスだったため、自転車や送迎の許可を得て、負担を軽減。

(2) フリースクールやオンライン学習との併用

学校に戻りたくない場合でも、フリースクールやオンライン学習を活用することで、学びの場を確保できます。

フリースクールやオンライン学習を活用する例
フリースクールで社会性を維持しつつ、学びはオンラインで進める
学校に戻る代わりに、フリースクールや自主学習を選択する
「午前はフリースクール、午後はオンライン学習」というハイブリッド型

🔹 ケース3: 学校+フリースクール併用
学校には週に2回登校し、それ以外はフリースクールで勉強。
学校の友達とのつながりを維持しながら、自分のペースで学習。

🔹 ケース4: 完全オンライン学習+大学進学
全日制高校には行かず、オンライン学習で高卒認定を取得し、その後大学へ進学。
通信制高校+予備校の組み合わせで難関大学に合格するケースも多数。


3. 「場の提供」が子どもの才能開花につながる

子どもは「社会との接点をどのように持つか?」によって、才能を開花させるタイミングが大きく変わります。

そこで、元不登校の高校生・大学生や、元不登校の親との交流を通じて、自然と「自分の未来の可能性」に気づく場を提供することが重要です。

(1) 元不登校の先輩との交流

✅ 「自分と同じ経験をした人が、どのように乗り越えたか」を知ることで、将来の見通しが持てる
✅ 実際に大学に進学した先輩から「勉強のやり方」や「進路の決め方」を学ぶ
✅ 「自分もやればできる」と思えるきっかけを得る

(2) 元不登校の親との交流

✅ 「親自身がどのような心の変化を経験したか」を聞くことで、今の自分の状態を客観的に見られる
✅ 「無理に学校に戻そうとしないことが、結果的に子どもの成長につながる」ことを知る
✅ 「焦らなくても大丈夫」という安心感を得られる


4. まとめ

不登校は個人の問題ではなく、社会全体の集合的無意識の影響を受けている
集合的無意識にある「学校に行くのが普通」という価値観を疑い、多様な選択肢を考えることが支援の第一歩
元型(アーキタイプ)を活用することで、子どもの才能に合った支援ができる
親の無意識の影響を整理し、最適な進路を選択できるようにする
学校復帰・フリースクール・オンライン学習など、多様な進路選択を支援する
元不登校の親や学生との交流の「場の提供」によって、親子ともに安心感を得られる

本講座では、集合的無意識の視点と「場の提供」を活かし、子どもと親が自分らしく生きられる環境を整える支援を行っていきます。